楽天は善人に厳罰与えるらしい
楽天市場は、自社のモールで二重価格表示をした出店に一カ月のサービス停止処分を下した。これが厳罰だったのかそれとも軽いのかは分からないが、当然の処置だと思う。できれば、悪質な出店は早々に退出いただいて、安心して購入できるモールにしてもらいたい。でないと、モールが荒れ、真面目に商売をしている店までが悪質とされてしまう。
楽天市場への出店は、聞くところによると結構コストがかかるらしい。もちろん、単独で集客することを考えると、集客力のあるモールで展開した方が販売に集中できるなどのメリットもある。であれば尚の事、モールを荒らしてもらってはいい迷惑だ。
とは言え、いったんは決着したのか、と思ったが、どうもそうではなさそうだ。
「楽天市場」が性善説に立っていた理由:日経ビジネスオンライン
「楽天市場トップの高橋理人常務執行役員独占インタビュー」より引用
高橋氏: あくまでも性善説に立ってビジネスを展開するつもりだ。我々は他社のように無料で出店できるわけではない。導入費用もかかるし、売れなくても月額費用もかかる。出店に当たり、極めて高いハードルがいくつもある。性善説という根拠はまさにそこだ。無料で出店できるところには片手間でやる事業者もあるだろう。一瞬だけ売り上げて、逃げる事業者もいるだろう。無料のECモールは性善説には立てない。
--引用おわり--
要は、チェックが甘かったことは反省するが、それは「性善説」でビジネスを展開しているからだ、と。「性善説」ということは、出店者はすべて「善人」である、と考えているらしい。モールにとって第一の顧客は商品を購入する来店客ではなく、様々な費用を支払ってくれる出店者である。善人であれば管理コストは少なくて済むだろう。つまり、楽天市場もまた(想定外の)悪質な出店者によって迷惑している、とでも言いたげ感じがする。
それよりも、「性善説」をどう解釈しているのか分からないが、これには腑に落ちない点がある。彼らは自分たちが「善人」として解釈した出店者に罰を与えるというのか。性善説と言うのだから、この度の不祥事が起きた理由は出店者側の問題ではない、ということになる。少なくとも、モールはそう考えている、ということになる。性善説によれば、善人も時に悪事を行なうことがあるが、それは「状況」や「環境」がそうさせる、と見る。
普段は真面目な経理担当者が、ふと、自社の資金が無防備に管理されていることに気づく。今の給料ではローンの負担も重いし、子供の学費もこれからますますかかるし、たまには家族で旅行もしたい、と。悪事は、こういう時に起きたりする。事件が発覚したとき周りの者は「あの真面目な◯◯さんが」と。
つまり、楽天市場は、自らの口で「あの不祥事は我々が、善人である出店者に悪事をさせてしまったのです」と語っているわけだ。しかも、その善人たちにペナルティを課したのだ。ちょっと考えても矛盾している。こんなものは、モールの信頼性維持で手抜きをしたことに対する、ただの言い訳だ。
記事にあるように「無料」のサイトとの比較で語ってるのだが、明らかにYhoo!ショッピングの無料化を意識してのことだ。
「店舗数で楽天超え」 ヤフーEC無料化、2週間で5万5000件の出店申し込み - ITmedia ニュース
無料にすればいい加減な出店者が「食い逃げ」のような悪質な商売をするために集まる。自社のモールは高い分、真剣な出店者しか来ない、と。その高いコストは、本来、モールの信頼性管理のために、つまり、来店客を守るために使うべき金だ。また、善良な出店者が怪しまれないようにするためにモールの信頼性はを維持するために使うべき金でもある。自社の「儲け」を増やすために、来店客や善良な出店者に迷惑や損をかけてどうする、と言いたい。
性善説でビジネスを展開しようが、性悪説で展開しようが、それはモールの側の都合だ。それでモールが荒れるようなら、みな「どうせECなんていかがわしいものだ」と考え、より安いサービスに動いて行く。